MOOMIN meets TANCO
All About SOWAKA

 
Interview by Naohiro Moro / Photo by Hiroshi Nirei [撮影協力/新江ノ島水族館]
 

メジャー・デビュー満10年を数えたMoominの8作目、オリジナル作品としては2年振りのアルバム『SOWAKA』完成! その5月23日の発売を控え、ムーミン当人はもちろん、今作においてプロデューサー/トラック・メイカーとして4曲を手掛けているホーム・グロウンのTancoにも同席してもらい、注目のアルバムについての話しを聞いた。
 
●MoominさんとTancoさんの共同作業っていうのは、もう何年もやっていることかと思うんですけど、今回、ホームGというより、Tancoさん単独のプロデュース作業っていうニュアンスが強いのかな、と思ったんですけど。
Tanco(以下T):そうですか。言われてみれば単独でプロデュースっていうのは、今まで無かったかな。まぁ、出て来るところは同じなんですけどね、最初に僕がやる作業自体は。バンドでアレンジしても、僕ひとりでも。ただひとりで最後まで仕上げた分、若干のニュアンスの違いは出たかも知れない。
 
●ジャマイカ人のミュージシャンのトラック・メイカーがスタジオやってる作業と同じ様なやり方ですよね。手弾きのシークエンスでパッと作っちゃうみたいな。
Moomin(以下M):やっぱ、Tancoさんはアイディアが豊富だから。いろんな音楽を知ってるから、あらゆる音楽からおいしいところを引っ張って来てくれるし。ひとりで煮詰まっちゃった感じの時でも、ちょっと音もらっただけで、メロディが浮かんで来るっていうか。
T:いやいや、こっちも一緒だよ。ひとりで作ってる時より、歌い手さんが居てくれた方が、いいのか、悪いのか、方向性が見えて来やすいし。そういった意味では、今回は、藤沢の「ゼット」っていうスタジオで、プリプロ作業をやってたんだけど、その作る環境が良かったんじゃないと思ってて。元々Moominのスタッフで、今、C.I.Cっていうラップ・グループをやってるSharにエンジニアしてもらって。
 
● お二人とも住んでるところも近いし、そこからゼットまでも近いですからね。
M:そう。きっちり時間を気にしたりする必要もなくやれたのは大きいですね。普段通りの感じで、ゼットに行くと、僕の作業の日じゃない時でもTancoさんが居たりするから、そこからアレンジの話とかが盛り上がって、そのまま朝まで作業しちゃうとか。遊びの延長みたいな感覚でリラックスして出来たみたいな、ね。話してるうちにアイディアが出て来ると、こっちもTancoのヴァイブスを下げない様に、すぐにメロディ作ったりして。
T:また、あそこに出入りしてる湘南の音楽仲間も頻繁に現れるから、みんなで音楽で遊んでる感じですね(笑)。集まる連中も、レゲエに限らず、ラップしてる奴もいれば、ロックの連中もいるし。それと葉山から藤沢に行く道もすごく重要だったな。行き帰りの移動の車って、僕にとってすごい重要で、やっぱり、湘南の中で作業出来るっていうのはいいですね。134号線沿いに海を見ながらスタジオに向かうっていうのがすごくいいんですよ。近いし。
M:ホント。雨が降ってたりしても、海沿いを走ってるといいんですよね。
 
●そういう意味じゃあ、本当に「湘南サウンド」ですね。言葉だけじゃなく、湘南の音楽コミュニティで作られたっていう。そういう環境が更に出来つつあるってことですね。Moominさんはご自身で今回のアルバムについてどうですか?
M:そうですね。どの曲を特に推すというより、やっぱり、どの曲にも言いたいことがあるし。人間ってどんな人でも多面的なものじゃないですか。どんな人にもいい側面もあり、悪い面もあり、そのどれを取ってもその人であるのと一緒で、僕もいろんな面の自分を曲を通じて表現してるんで、その辺を感じてもらいたいですね。
 
●全て手掛けられた訳じゃないですけど、Tancoさんなりのこのアルバムの印象とか、どんな感じですか?
T:やっぱり、Moominは詞がいいから。それはいつも一貫して感じてることなんだけど。今回は今までより大人のMoominていうか、アーバンな感じというか、そんな感じがしましたね。まだチラッとしか聞けてないんだけど、オレの好きな感じの曲ばっかりだと思いました。それと今まで僕のプロデュースした曲で、ストレートなラヴ・ソングって、やって無かったんですよ。その辺を今回ビシっとやってみたら、やっぱり良かった。「陽炎」とか「その瞳はミステリアス」っていう曲なんですけど。
 
●それではそろそろ2007シーズン開幕ですが、お二人からレゲエ・ファンにメッセージを頂けますか?
M:やっとアルバムを作り終えたところなんで、まだ実感が湧かないんですけど、またライヴで歌うと新曲も自分の中で違って来るし、楽しみですね。あっと言う間に10何年歌ってきたんだけど、やっと自分の歌とか、自分というシンガーがどんなものなのか、分かり始めた様な気もしてるし、まだまだ歌うことが沢山あると思う中、今後も挑戦して行きたいですね。夏はホント忙しくなるし、特にTancoさんなんてハードだと思うんだけど、お客さんの前だと、元気が出るっていうか、力が出るんで、ライヴでお会いした時にはよろしく。
T:今はまだ制作段階だけど、今年ももう夏はほとんどスケジュールが埋まってるんで、楽しみな反面、自分の体調管理とか気を付けなきゃいけない部分もあるし。どっちにしても一生続けていくつもりで臨んでるんで、皆さんのサポートをよろしくお願いします。
 
 
 
「SOWAKA」
Moomin
[Universal / UPCI-1062 / Album]
 
  
  
 
「No No No」
Moomin
[Universal / UPCI-1062 / Single]
 
  
  
  
  
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Moominの2年振りとなるオリジナル・アルバム『SOWAKA』を二木崇が徹底分析。
Text by Takashi Futatsugi / Photo by Kobayashi Taxi
 

オール・カヴァーだった『Adapt』はMoominにとっての“デビュー10周年記念”盤であり、またその“キャリアの一区切り”に相応しい作品集だった。思えばここに至るまでのMoominは、持ち前の“Sweet Voice”を武器に様々な可能性(音楽的な)に挑んできた訳で、それはとりもなおさず“ジャパニーズ・レゲエの進化/発展”に繋がるものだったと言えるだろう。Home Grownのような“バンド”やGifted Childsのような“プロデューサー”、Infinity16やBlast Starといった“サウンド”がオリジナル楽曲をリリースする際にもそこに必ずMoominの姿があった。そんな独自のポジションを築いてもなお、“前に進むこと”をやめない、どこまでも“Positive”なオリジナル・シンガー。通算8作目となるこの『SOWAKA』も正に“Moomin節全開”の意欲作だ。因みにそのタイトルは、ブッダの智慧を三蔵法師玄奘が262文字で表した経典=パンチライン集『般若心経』の締めの言葉、“僧莎訶”から取られている。“めでたし”と訳されるその言葉は、ブッダが人間の行動の中で最も好む三要素である「掃除」「笑い」「感謝」の頭文字を意味するという。常に地に足着いた活動を心掛けるMoominらしいライフサイズのNiceなタイトルだと思う。で、その気になる内容は……
 
●山あり谷ありライトステップ(Prod. by Tanco)
 爽やかでいて土の匂いのするアフリカン・ファンク。その気持ち良くハネるベース・ラインに絡む、Moominのハイ・トーン・ヴォイスも実にイキイキしている。「鼻歌でも口ずさんでライトステップ」まさにそんな気分になるオープニング・トラック。
●No No No(Prod. by Takahiro Watanabe)
 先行カットされた珠玉のラヴァーズ・チューン。にしてMoominらしいストレートな人生讃歌。渡辺貴浩+Nodatinのスケール感のあるアレンジも、主役のメッセージを優しくバックアップしている。
●陽炎(Prod. by Tanco)
 潮風、太陽、星空、蜃気楼、月明かり、熱帯夜、黄昏、陽炎、波間……といった光景が浮かび易いキーワードを散りばめたスムースで狂おしい“一夏の回想”。アコースティックな哀愁の旋律、グッとこない訳がないブリッジもポイント高し。
●One Big Road(Prod. by Moomin)
 Red Spider(Junior)による包容力抜群のヒューマン・リディムに乗せて、“別れ”という痛みを乗り超えようとする人間の気持ちを代弁したバラッド。ディーン・フレイザーの“よく唄う”サックスも泣ける仕上がり。
●長い夜(Prod. by Infinity 16)
 “I Miss You I Need You 愛してる あてなく さまよう長い夜”というサビにも万感の想いが篭る“切ない男心”をうたった失恋歌。メジャー・コードの痛快な裏打ちのトラックだからこそ、よりセツない? Infinity 16と言えばMoomin入りの「Dream Lover」も必聴。
●その瞳はミステリアス(Prod. by Tanco)
 オート・チューンのかかったコーラスからグイっと引き込まれる、グルーヴィーなアーバン・ポップ調のラヴ・ソング。求愛のフレーズを重ねるごとにアツくなる……でも“歌いっぷり”は至ってクール。そう、和製ウェイン・ワンダー的(?)なフェロモン横溢曲。
●Still Remember(Prod. by Blast Star)
 Blast Starのアルバム『Miami Shine』が初出となる、スティーヴン・マクレガー作の美麗ミディアム・トラックに、Moominドクトクのヴァイブレーションが活きたハモリが冴えまくるベスト・マッチな一曲。冒頭の“語り”もいい味出してます。
●Run Di Place [Another Wicked Mix](Prod. by Gifted Childs)
 Hase-T、MA$AMATIXXXのプロデューサー・ユニット=Gifted Childsのリーダー・アルバムにおさめられていたKen-Uとの初コンビ曲の別ヴァージョン。“ダンスホール・マナー”の何たるかを心得たこの“4人”ならではのビッグ・チューン。
●サウンドゲリラ(Prod. by Daddy-O)
 NanjamanやMunehiroの作品で知られるDaddy-Oの手による重厚なワン・ドロップ物のオケをバックに「サウンドゲリラ 今立ち上がれ 広いエリア 届けこの声」と訴える自由の使者。その芯の強い歌い回しはやはり“レゲエ”そのものだ。
●Party Time(Prod. by Sunset the platinum sound)
 "Concrete" の1ウェイ盤も出たばかり、で多方面で活躍中の東京プラチナム・サウンド=Sunsetの2人がJAのパートナー、カーク・ベネットと制作したエレクトロなお祭り囃子オケでVibes UpしたMoominが「ラッセーラッセーラ!」と唱える最高のダンス・アンセム。
●君がいれば(Prod. by Sly & Robbie)
 JAの生んだ最強のリズム・ツインズ=スライ&ロビ−作の殿堂入りトラック "Unmaterd Taxi" に、ついにMoominも“乗車”! ある種、バック・トゥ・ベーシック的な飾りのない精一杯の言葉と歌声が染み渡る。
●その瞳はミステリアス Remix(Prod. by Tanco)
 前出の元版をややアッパーにしたリミックス。“相性抜群のラガマフィンDee Jay”YoYo-Cのパートが加わり、主役の醸し出す艶っぽいニュアンスもよりヴィヴィッドな印象に。
 
 ……と、そのキャリアの次なる10年に向かっての大事な第一歩となる本作は、永遠の美声年の“新たなる挑戦”の気概に満ちた意欲作、となっている。めでたし……とシメるにはまだ早いか……。
 
 
Tanco (Home Grown)
デビュー当時からの付き合いでもう何曲も一緒に曲作りをさせてもらってるけど、ハッキリ言って今回の『SOWAKA』が一番ヤバい!! スウィート・ヴォイス健在、渾身のオリジナル楽曲は聞く人を虜にする事だろう。2007年のレゲエは『SOWAKA』以外に考えられない。
 
YoYo-C
オレの思う日本人のレゲエ・シンガーの中で、最もレゲエらしさを持っていて歌もうまい。相性もいいから、もう今回のを入れて4曲もムーミンとコンビネーションをやってる訳で、おかげでいつもいいライヴが出来る。相棒みたいな存在だよ。
 
Bam Bam & Dizzy (Sunset the platinum sound)
アルバム・リリースおめでとう! いつもMoominの曲からいいヴァイブスをもらってます。自分らとしては初のMoominとのレコーディングとなりましたが、Good VibesのMoominと楽しく仕事させてもらいまして、そして現場向きのヤバイ曲ができました! もちろんヘヴィ・ロテさせてもらいますよー! リスペクト!
 
Infinity 16
ニュー・アルバム、リリースおめでとうございます。Moominとはサウンド・クラッシュがある度に沢山のえぐいダブ・プレートをもらい、Infinityにとって必要不可欠なアーティストです。「Dream Lover」でも参加してもらって、毎回すごく感謝しています。これからも一緒にレゲエ・シーンを盛り上げていきましょう。Big Respect!!!
 
Blast Star
10年前、自分達の駆け出しの頃、イベントに初めて出てくれたビッグ・アーティスト。そして、今回も制作中にアーティスト選びが難航する中、快く引き受けてくれたMoomin。そんな懐デカイ日本で数少ない貴重なレゲエ・シンガー。Keep going strong!!
 
Takahiro Watanabe
Moominとは「かけがえのないもの」のレコーディングでRhodesを弾いて以来、ライヴ、レコーディングに参加しています。シングル・カットされた「No No No」は、僕なりのMoominワールドを作ってみました。Moominのスウィート・ヴォイスが乗っかって心地よいチューンに仕上がりました!  Big Up!
 
Hase-T
日本のレゲエの歴史と共に歩んで来た、シンガーMoomin。変わることの無い美声に、時をへて深みと艶が増してきた感じがします。そんな今のMoominと一緒に、作品が作れて光栄です。
 
Red Spider (Junior)
V.I.Pの7inchの「Moonlight Dancehall」にはかなりの衝撃を受けた。それ以来Moominの虜です。
 
Daddy-O
茅ヶ崎でMoominと知り合って、かれこれ10数年になります。今回参加したこの曲は、やさしいメロディーとキャッチーなサビのコンシャスなミディアム・チューンに仕上がりました。是非、爆音で聞いてみてください。

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