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JOE GIBBS 1945-2008
 
Text by Takeshi Fujikawa
 

 
スタジオ・ワンやトレジャー・アイルに続きジャマイカの音楽シーンを60年代半ばから牽引してきたプロデューサー、ジョー・ギブスが亡くなった。彼がレゲエ界に残した宝物をこれからも聴き継ぐために、ここではごく簡単ではあるが彼の偉大な足跡を振り返る。
 
 ジョー・ギブスことジョエル・ギブソンは、バニー・リーらと共にデューク・リード、コクソン・ドッドらの次の世代として60年代後半に台頭したジャマイカ音楽界の新興勢力だった。最初期は、Roy Shirley「Hold Them」や、映画『ラフンタフ』でも再演されたStranger & Gladdy「Just Like A River」等のヒットで注目を浴びた。60年代末には、コクソンと袂を分かったリー・ペリーと組み、パイオニアーズ等の多くのヒットにも恵まれた。ペリーも自身のレーベル名とする「I am The Upsetter」をリリースするなど、ペリーとの蜜月、隆盛は続くかに思われたが、ペリーに「People Funny Boy」で絶縁状をたたきつけられた後はナイニーと組み、アマルガメイテッド等のレーベル等を通じてリリースを継続した。
 
69年にはレコード・ショップと、裏に小さなスタジオも建設、制作を増加させていく。そのスタジオ以前から利用していたのがランディーズ・スタジオで、そこのエンジニアがエロル・トンプソンだった。トンプソンとギブスはマイティ2と称されるレゲエ界屈指の制作チームとして数多くのレゲエの傑作をものにするが、彼らが本格的に始動するのは、ギブスが1975年、リタイアメント・クレッシェントに新しい16チャンネルの新スタジオを建設し、エロルを専属エンジニアとして引き抜いてからのことだ。Culture「Two Sevens Clash」、Jacob Miller「Shaky Girl」、Prince Far I「Heavy Manners」、Trinity「Three Piece Suit」、Althea & Donna「Uptown Top Ranking」、Black Uhuru「Rent Man」、Leo Graham「A Win Them」…等、ヒットは数え切れない。

"The Mighty 2"
Joe Gibbs & Errol Thompson, V.A.

[Heartbeat / CDHB 361]

"Joe Gibbs Production"
V.A.

[Soul Jazz / SJR CD76]

 ヒットの一部は英ソウル・ジャズからの『Joe Gibbs Productions』や、米ハートビートからの『The Mighty 2』等の編集盤等で聴くことができるのでお勧めしておく。それらと併せてエロル・トンプソンのエンジニアとしての評価を決定的にした『African Dub』シリーズは外せない。エロルの実験精神とスタジオ・ワークが結実したこのシリーズ、特に第3集の素晴らしさは筆舌に尽くしがたい。そして、それらの素晴らしい作品が、プロフェッショナルズと呼ばれるロイド・パークスやスライ&ロビー等のジャマイカを代表する手練れ音楽職人達の演奏に支えられていたことも特筆しておきたい。

 ジョー・ギブス自身は、シンガーとしての派手なキャリアがあるわけでもないし、映画『ロッカーズ』でのメガネ姿と、ビジネスマンとしての印象が強いのだが(左写真)、今回原稿を書くにあたり彼の手がけた作品を振り返るとき、改めてその偉大さと凄さを感じずにはいられない。特に70年代のジョー・ギブスの諸作品は様々なタイプのレゲエが揃っている。その多様性ゆえにレーベルの特徴に欠けるという指摘もあるが、70年代のルーツ・レゲエ黄金時代にこれからもずっと聴き継がれるだろう素晴らしい宝物を残してくれた名プロデューサーであった。心からご冥福を祈りたい。
 

セオドロス・バファルコス監督による映画『Rockers』で
主役のホースマウスに「I Will Give You One Chance」と叫ぶジョー・ギブス。
( c / Blue Sun Film)

 
 
ニューヨークのラジオ局、Sirius Satellite RadioのReggae Rhythms Channelが週に一回放送する「Sunday Classics」(ディスクジョッキーはPat McKay)にて2008年3月2日に放送されたJoe Gibbs生前最期のインタビューの一部を再現。収録は彼が亡くなる2週間前だったそうだ。
 
●調子はいかがですか? 
Joe Gibbs(以下J):それなりにオーライだ。OKさ。
 
●健康問題はありますか?
J:多少問題はあるけど、そこまで悪くはないよ。
 
●ジャマイカのどちらで生まれたのですか?
J:モンテゴベイで生まれた。
 
●今はキングストン在住ですか?
J:そうだ。覚えている限りずっとキングストンだ。20代からさ。
 
●Joe Gibbs Live On“Reggae Rhythms”。みなさん、私たちはJoe Gibbsさんと放送中です。伝説的なプロデューサーであり、Amalgamatedレーベルの創始者でもあり、その前はレコード・ショップのオーナーで、ジャマイカ生まれの実業家であり、ずっと昔からジャマイカの本物のレゲエ・ミュージッックを作ってきた方です。いつ自身のキャリアをスタートさせましたか?
J:1963年だったかな。32 Beeston Streetから始まった。
 
●その頃の様子を教えて頂けますか? Beeston Streetはジャマイカのどこですか?
J:自分のお店があったBeeston Streetはアーリン・ストリートの近くで、アーリン・ストリートは、常に音楽があふれていたから、ビート・ストリート、またはミュージック・ストリートとも言われてたな。Coxsone(Dodd)もいたし、Duke Reidはすぐ近くのチャールズ・ストリートにいた。Prince Busterもその近くにいたし、その狭い地区では音楽の仕事をすることは独特であり、また当然のようなことでもあったんだ。少し歩くだけでレコードを持っていけるからね。レコードを買いに来た人にとってもそうだし、便利だったんだ。
 
●それが今のジャマイカ音楽業界の基礎となっているんですね?
J:そうだな。
 
●あなたの長いキャリアの間、初期にはレコーディング・アーティスト、Lynn Taitt & The Jetsを、そして70年代にはPrince Far I や Trinityら、他のプロデューサーが余りレコーディングしてこなかったアーティストも手がけられてますよね?
J:そうだね。チャイニーズの誰かがダブ・アルバムを作って僕もダブに夢中になったんだ。それで『African Dub』を作った。
 
●そして去年、その『African Dub』の1〜4が17 North Parade Recordsから再発されました。17 North Paradeという名前の由来は?
J:自分のショップが 20 North Paradeにあったんだ。17 North Parade にはVincent(Chin)の Randy's Studioあった。ダウンタウンにあって、人々がバスを降りるとそのまま17 North Paradeにあるミュージック・ショップに入って行ったよ。スター・アーティストがそのコーナーに集まっていたから、そのストリート・コーナーは“スター・コーナー”って呼ばれたりもしてたな。
 
●Lee“Scratch”Perryにとってあなたと仕事をした事は、彼のキャリアにおいてもとても重要な出来事だったと思います。どうして彼と一緒に仕事し始めたのですか?
J:Lee“Scratch”Perryは、最初はプロデューサーとして僕らとやり始めたんだ。彼は最初Coxsoneと一緒にやってたけど、あまりハッピーじゃなかったんでね。僕は彼にもう少し自由にやらせてあげられたし、一対一のコミュニケーションを図っていたから、とても幸せな時間を過ごせたよ。彼とはJunior Byles、Dennis Brown、Gregory Isaacsや、その他たくさんのアーティストと仕事したよ。Lee Perry自身のレコードも制作したよ。
 
●あなたのAmalgamatedレーベルは当時、Chris Blackwellによってイギリスで配給されていましたが、イギリスのマーケットの重要性は?
J:確かに重要だった。年に何回もイギリスに行けたわけじゃないし、Blue Beatとか他にあったレーベルの中で、Amalgamatedというレーベルをイギリスで確立してくれたからね。ジャマイカでのレコード発売と同時にイギリスでもレコードを発売できたからとても重要な役割を果たしたと思うよ。ジャマイカを離れてイギリスに住んでいたジャマイカ人達は僕の新曲をとてもハッピーな気分で受け入れてくれてたよ。
 
●レゲエ・ミュージックの将来についてはどうお考えですか?
J:未だにレゲエが知られていない極東の、例えば中国や他にもまだあるだろうけど、やっと世界で認知されてきているところだと思うよ。いつの日か、レゲエは他の音楽と同じようにもっと影響を与える音楽になっていくと思うよ。 

R.I.P. JOE GIBBS

 

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