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EARL "CHINNA" SMITH
  
Interview by Natsuki Tohi / Photo by Shizuo "EC" Ishii
 

 すでに8作目をむかえたEarl "Chinna" Smithによるアコースティック・シリーズ“Inna de Yard”。常に落ち着いて、リラックスしている彼と、彼の暖かいハートに触れられる、そうここキングストン10にあるChinna de Yardから彼の声をお届けしよう。
 
 Earl“Chinna”Smith(アール・チナ・スミス)。「レゲエがレゲエだった頃」、そうルーツ・レゲエの全盛期もっとも活躍し、現在でもSizzlaの楽曲などにも参加するレゲエ界のギター・プリースト。目まぐるしいジャマイカのシーンに居続けながら、『ワード・サウンド・パワー』('79)で放つ、ルーツ・マンとしての感性を汚すことなく、歩み続けた彼の近年の傑作シリーズ『Inna de Yard』。それは彼の自宅(Yard)の庭や居間が即興のスタジオで、ケテドラムなどを中心に電子音を一切使わない究極にシンプルな、Unplugged Style。
 
●シリーズ第一作目『Earl Chinna Smith&Idrens』を聴いた時、シンプルな美しさに感動したと同時に、そのスタイルには現在の音楽シーンに対する、静かだけれど深い“抗議”が込められてるのかとも感じました。
Earl "Chinna" Smith(以下C):なるほど、その表現はいいね、静かな抗議。でも抗議というよりは、現代とは“違う”アプローチをしただけだ。今は全てが騒々しく、音楽の真の目的が破壊されているね。コマーシャル文化が多くのミュージシャンの“マインド”を壊してしまったことは事実だ。わかるかい?
 
 オーケー、金の良さは認めるが、それに支配されすぎている。エンターテイメントの世界に競争が持ち込まれた。競争はつまり、Warだ。誰かは必ず勝ち、誰かは必ず負ける。勝者は勝ち続ける為に必死になっている。しかし私にとって音楽とは、全くそんなものじゃない。いいかい? だから私は、音楽をリスペクトし、音楽とは何かという事を忘れずに、純粋に音楽を愛し続けられる自分のスペースを常に確保し続けてきたんだ。
 
 最初、(フランスのレーベル)MakasoundのNicolasがアコースティック・スタイルの作品をやりたいと言って、ここに来たんだ。いつものようにチャリスをくゆらせながら、ジャーを讃えてギターを弾いていると、「これを録音したい」と、この雰囲気のままね。そうしてできたのが1作目で、ちょうどそこにKiddus-Iもいたから、彼の作品も同じ日に録った。まったく計画されたことではなかったから、本当に自然に、どうすべきかなんてダイレクションは一切ナシ、感じたままこのヴァイブスが録音されたというわけだ。
 
●その自然な成り行きから始まり、実に8作ものシリーズになったわけですね。なぜこんなにも受け入れられたのでしょうか?
C:現代の音楽はまるでスナックだが、私達の音楽はいわばリアル・フードだ。昆虫と動物はスナックは食べない。……わかるかい?(笑)  私たちの世代は、いわば金字塔を建て、今でもそれは健在だ。そして私たちはその音楽を保存し、守っている。事実このシリーズのほとんどの曲はすでにフル・バンドでレコーディングされたものを、オリジナルのフォームで演奏し直している。だから皆、気に入って感謝して聞いてくれるんだろう。
 
●Kiddus-Iといえば、映画ロッカーズで鮮烈な姿を現して以来、レコーディングはされていたようですが、一切リリースしなかったとして今まではミステリアスな存在でしたね。
C:彼は本当にインディペンデントなシンガーだから、決してラット・レースに巻き込まれることを好まなかったからね。わかるだろ?
 
●意図してメイン・ストリームとは違う道を選んだということ?
C:私達にとって「メイン・ストリーム」などというものはない、あるのはただ「世界」だ。音楽はハートからこなくてはならない、言ったとおり、どう「感じる」かだ。いいかい、私達は自動的に世界とコネクトしている。だから私が感じる事、このフィーリングは同時に君と共有できる。彼女とも、彼とも。音楽というのは人々が繋がる事のできるとても簡単なソースなんだ。なぜなら、ポジティブ・ヴァイブレーションは例えば私がこう、ぶりぃん、とギターを鳴らせばほら、ヴァイブが流れ出し、感じる。わかるね? 時代は変わる、しかしルーツ(根っこ)は変わらない。枝や葉は生い茂るだろう、しかしI&I ルーツはずっとそこにある、それが私だ。
 
 シリーズはKiddus-Iの他、Jr. Murvin、Mighty Diamonds、Congosなどまさに彼のIdrens達が作品を残している。現在Prince Allaも録音済みだが、リリースについては「ビジネスの事はよくわからないからね」とまったくの無頓着ぶり。ここ日本では、ただリラックスすることでさえ、何か理由をつけないとままならない状態だが、ここChinna de Yardではまったく違う空気が流れているようだ。Inna de Yardとはどういう所か日本の皆に説明して。とお願いすると、「オーライ、Inna de Yard、ブレジン! Play the Drum!」。そう叫ぶやいなや、ドラムセットの前に座っていたアーティストが勢いよく叩き出し、裏打ちワンドロップを静かに続け、「Inna de Yard、ブレジン、Cut of the Herb!and DJ!」と言えば、たちまち側にいたアーティストが歌いだし、小さな庭に暖かいリズムが溢れ出す。「Inna de YardではこうしてIrie-Iミュージックが流れ、キッチンでは食事が振舞われ、ベッドでは眠れる。そう、私達に必要なほとんど全てがある場所、それがInna de Yardだ」。Just be Simple。「シンプルになるんだ」。最後にChinnaはそう繰り返した。
 
 
 

  









INNA DE YARD SERIES

"Inna De Yard"
Earl "Chinna" Smith & Idrens

[Makasound / IDY001]
 


"Inna De Yard"
Kiddus I

[Makasound / IDY002]
 


"Inna De Yard"
Linval Thompson

[Makasound / IDY003]



"Inna De Yard"
Cedric "Congos" Mylton

[Makasound / IDY004]



"Inna De Yard"
The Viceroys

[Makasound / IDY005]



"Inna De Yard"
Ras Michael Junior

[Makasound / IDY006]
 


"Inna De Yard"
Junior Murvin

[Makasound / IDY007]



"Inna De Yard"
The Mighty Diamonds

[Makasound / IDY009]



"Inna De Yard All Stars"
V.A.

[Makasound / IDY008]


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