1999年10月号 

1. G.K.MARYAN / G.K.Funk Maryan Soul
(えん突つ)

この男の "作品" を心待ちにしてたB-ボーイはさぞや多いコトだろう。そう "調子ハドーダイイカレタ兄弟" GKが、とびっきりイカれたテープをDJミッシー、アレルギーとのセッションでドロップした。MCは全てGKで、「証言」「夜ジェット」「Weekend Funk」「Free Green」等の雷名義のモノを含めて全編これ竹を割った様なGK節全開のモノばかりなのでファンはタマラないだろう。馴染みのいいブレイクの連続も調子イイ。これぞ "MCが作るテープ" 好サンプルというか今までになかったタイプの一本。


2. JUNGLE BROTHERS / V.I.P.
(V2)

フジロックへの参加でも注目を集めた大御所の最新5作目。今回は既報通り英ビッグ・ビーツ界の旋風児アレックス・ギフォード(プロペラヘッズ)が全面的に制作を担当し、新機軸だらけの野心作に仕上がっている。例の "ジーニー" 使いのキャッチーなシングル曲「V.I.P.」を始め、ブラック・アイド・ピーズとの共演曲や、ドラムンベースにブルース、と実に様々なサウンドスケープが用意され、そこに活き活きした2人のラップが乗るそれだけで十分に楽しい。オールドスクール調の最終曲に含蓄感じない人っている?


3. PUBLIC ENEMY / There's A Poison Going On
(ビクター)

"デフジャム" をドロップ・アウトしたPEが新興ネット・ミュージック・レーベル、"アトミック・ポップ" とサインした事はもう御存知だろう。そのMP3方式での第一弾リリースとなった本作はチャックD以下四天王が再結集した前作『He Got Game』(サントラ)も忘れさせる強力内容。全盛期さながらの勢いでアジるチャックDの恰好良さったらない。トム・E・ホークによる時間軸を意識させない骨太ファンキー・トラックも○。祝完全復活。CDでゲットするなら完全対訳付の国内盤が絶対のオススメ!


4. EPMD / Out Of Business
(マーキュリー)

賛否両論だった再結成作から約2年で何とも意味深なタイトルの6作目が登場。一時は険悪だったと伝えられるこの元最強タッグも流石に今作ではタイトな仕事ぶりで、DJスクラッチによるハイ・テンションなイントロから、同一オケでM.O.Pやメソッドマンが各々参加した "Sym-phony 2000" 二態、バスタを交えてのマニアックな名曲セルフ・リメイク等、実に重量感のある一枚となったディスク2=ベスト盤のセレクションも◎。これぞ男のファンク。


5. RAHZEL / Make The Music 2000
(MCA)

ザ・ルーツの "くちスクラッチ" 担当=ラゼール、噂の初ソロ。まるでヒューマン・オーケストラ、といった感じで、ラップ、ビートボックス、くちスクラッチに声真似、くちSE等、あらゆるオーラル・テクを駆使したトラックの連続は、グループの "作品" からは想像付かなかった位の壮絶さ。ピート・ロック制作のスマッシュ「All I Know」の他、ビズの名曲リメイク、スリック・リックやQティップらの "バッキング" に徹したものや生録のインタールード等、全編通じて飽きさせない。例のエリカ・バドゥの新曲も収録。正に、温故知新を地でゆく快作。


6.BLACKALICIOUS / NIA
(カッティングエッジ)

今月末頃には集団来日を果たすDJシャドウ率いるクワナム・クルーの核となるユニット、初のフル・アルバム。6年前の『Swansong』の衝撃は個人的にまだ尾を引いてるが、先行リリースとなった「A2GEP」ではカット・クミストによるあのテンポが上昇する複雑怪奇トラックを含めてネクスト・レヴェルに突入。そして本作で更に音楽的にディープで間口の広い世界を見せつける。鬼才チーク・エクセル作の映像美溢れるサウンドにスキルフルなギャブのMC…。"クアナム" の底力を見た!


7. V.A. / Violator The Album
(マーキュリー)

"デフジャム" 本部内にオフィスを構える業界でも一二を争う一大勢力=マネージメント・プロダクション兼レーベルのショウケース・コンピ。バスタ、ビートナッツ、ノリエガ、モブディープらレーベル(配給)の枠を越えた面子の新曲/リミックス目白押しで、中でもQティップの「Vivrant Thing」やスウィズ制作のLLクールJの「Say What」は早くもフロアを賑わせてる人気曲。バイオレーターの層の厚さを痛感する "イマの流れ" = "メイン・ストリームが分る一枚。


8. PLANET ASIA, 427 & FANATIK / Bringin' It Back
(Blackbelly)

オール・グッド・ヴァイナル" からアルバムも出しているベイエリアのビート職人=ファナティックが "PBWつながり" の若手俊英MC2人と組んだNew。と言っても元版はグッド・コンピ『Raid In Full』に入ってたヤツ。で、ここでの聴きモノはカット・マスター・カートによる例のブルース・リーねたのリミックス。2人の血気盛んな2MCのパートも勿論熱いが、レヴォリューションのコスリ・フックは「Walk The Angles」並の凄まじさ。カッコ良スギ!


9. BLAHZAY BLAHZAY / Federal Reserve Notez
(GAME)

8月に来日した(筈)のストレッチ・アームストロングのレーベル "ゲーム" からのNewは久々のブラーゼイ(昨年来日済)。新曲は計3トラックで、低血圧ファンク系の表題曲及び "Gee Sumz" そしてパーティ・カットの "Good For Ya Club" と全てPFカッティンの作、となっている。音は矢張りマッシヴBで録ったらしくストレッチ好みのベース・コンシャスなアンダーグラウンド・シットに仕上がった。PFのあの直線的なコスリが控え目なのは残念だが独国のマッシヴ・シーンとの共演曲といい、彼らの名をまた聞ける様になったのは嬉しい限り。


10. RASCO / The Birth
(Capasetik)

西海岸シーン期待の実力派バトルMC=ラスコの8曲入りEP。今回はヒス・パニック、プロテストら地元オークランドのトラック・メイカーをフック・アップしており、その成果は話題の「Scphisticated Mic Pro's」等に表れている。中でもリッチネス作の「Final Destination」はチキチキ入った南部モノっぽいオケで、ラスコも新しいスタイルで勝負。2曲で参加のプラネット・エイジアもイイ味出してるし、主役の緊張感の高いフロウも言う事ない。「Take It Back Home」からのファンも是非。アナログはインスト盤との2枚組。


11. キエるマキュウ / バットウカスミ斬り
(第三ノ忍者)

"ナンジャイ" でシーンに一球を投じたCQ+マキ・ザ・マジックの謎のユニット!? キエるマキュウ、約一年ぶりの第二球。今回も話題を呼びそうなイルな例えとフレーズ満載で「バットウカスミ斬り」にレーベル名でもある「第三ノ忍者」共にかなりの危険球、だ。ライムスターの素晴らしい最新作でも口を挟んでたマキの変化球MCとしての魅力も堪能出来れば、CQも球威のあるフロウも抜群。トラックの壊れっぷりも言うまでもない。マキュウForever!


12. ユウザロック★ / The Proffessional Entertainer (The Ruler's Back)
(Cutting Edge)

常に前進を続けるザ・ヴェテラン=ユウザロック★の近況報告×2トラックは、本気汁で客を沸かすコトを信条とする彼ならではのウーファーから唾が飛んで出そうなハード・ライミング・チューン。デヴ・ラージ入魂の激ロッキンなトラックを含め、単純明解なカッコ良さで突っ走る。片や併録の「ラップマシーン」は堀口+カンドンのVIPコンビによるハイファイなチキチキ物。で、ユウは連載でもお馴染のあのデフでイルなライム・ジャグリングでキメている。どちらもフレッシュでファン急増間違いナシ。