1999年12月号

MURO / Globe-Trotters (Incredible Records)

今月は映像をご紹介。Muroのソロ・ツアー「Globe-Trotters」全国5都市の模様を収めた、初のライヴ・ヴィデオがコレ。最終日、新宿リキッドルームの熱演を中心に、“ライヴ巧者”としてのMuroの凄みがストレートに伝わってくる構成で、当日“現場”に行けなかった人もそのタイトさにヤラレる事に。Boo, Goriki, DJ Wataraiの他、O.C., Twigy, Rinoらゲストの好演も。ド渋のオープニング映像を含め、何度もリワインドして観てしまう久々の映像作品だ。

XZIBIT / Restless (Sony)

スヌープの新作と並び、ウエストコースト発の特大ボムとして騒がれている、イグジビットの3rd。期待通り、ドレーや、エミネム、スヌープとのタッグも用意され(「Up In Smoke Tour」の映像も凄い!DVDだと50%増量)、客演仕事でも主役を喰いまくるX-マンは堂々たる“韻力”でリスナーの耳をワシ掴みに。お馴染のバトルキャット、サー・ジンクスの他、エリック・サーモンとの2度目の共演や、ロックワイルダーの曲もあるが、総じて今のフロアでウケるファンクになっている。何とも“濃い”アルバム!

V.A. / Greatest Party Beats (トイズファクトリー)

今年丁度“20周年”を迎えたトミー・ボーイのベスト・トラックス“パーティ編”。古くはバンバータ、ステッツアソニックから、デラ、デジタル・アンダーグラウンド、クーリオ、CNNまで。ミックスするはDJ kooh(Low Damage)。その“流れ”を捉えたミックス技術は一朝一夕ではコピー不可能(チーク・タイムもあったりする…)で、ビギナーから10年来、いや20年来のファンまでもが躍らされてしまう事に。“ミックスCD”というフォーマットの持つ“楽しさ”がこの一枚に凝縮されている。オススメ!

BREAKESTRA / Live Mix pt.1(日本クラウン)

ピーナッツ・バター・ウルフの "ストーンズスロウ" よりオール生でブレイク・ビーツを再現してしまう、とんでもないバンド=ブレイケストラが遂にアルバム・デビュー。約27曲を抜群の演奏力(限りなくオリジナルのブレイクに近いのだ!)で次から次へと繰り出す様はタダ只圧巻。ヒップホップを5〜10年以上聴いてる人ならば誰もが知ってるあのネタ、このネタが“生で演る意義”の下にプレイされるこの痛快さったらない。テープのみで販売された幻の「pt.1」も同時リリース。

THINK TANK / Think Tank3(アルファエンタープライズ)

ケイ・ボン率いる超オリジナルなヒップホップ組織=シンクタンクのミニ・アルバムが登場。1st EPの「Eat One / Made In」に2nd「Think Tank Part 3 / Mr. Hang」をカップリングし、新曲、インタールードを加え、展開してゆくシンクタンク・ワールド。その行き先は聴き手を嘲笑う様に自由。彼らが只のイカレタ連中ではないことは、この音楽的にも高度なセッションの数々が物語っている。ジューベイ、ババ、ノックスらMC間の会話も耳を引くし、トラックも最狂。煙に巻かれろ!

DARTHREIDER & DJ OSHOW / Welcome To The 変態 Zone(ポジティブ)

マイカデリックのダースレイダーと、DJオショウのコンビ名義での初アルバム。しかしながら、このコンテンツ・バリエーションの豊かさ、単純にカッコいいビートの数々と、ハマリまくったフロウの妙味は“痛快”の一言に尽きる。これは正に“アルバム・スケール”の作品であり、そんなハイ・レヴェルなモノをポンポン出せる彼は“天才”としか言い様がない。相方=真田人やグッドフェローズ、ヒデンカ、そして山田マンというゲスト陣の役割も面白く、アッと言う間に一枚聴き終えた…。これでけストレートにカッコいい変態は中々いない!

MURO FEAT. OC / Lyrlcal Tyrants(トイズファクトリー)

噂が噂を呼んでいた "Lyrical Tylants" の別ヴァージョンが遂に公開! NY仕上げという部分ではダイアモンド版と変らないが、トラックはMuro+ワタライで、フックが全く異なるこのヴァージョンはやはりシングル向き(そのフックはライブでも披露)。MuroとO.C.の掛け合いの見事さは言う迄もなく、ファロア・モンチの手によるリミックスもモンチの味が出てて、新たなコラボと言える“成果”を残している。併録の「Bohemian」ではUKのバーサンバによるブラジリアン・ハウス調の展開が聴け、Muroの懐の深さを逆に思い知る、という内容。ヤラレた!

ZEEBRA FEAT. AKTION / Neva Enuff(ポリスター)

北野武監督作品『Brother』のインスパイアード・ソング。まずはヒップホップが日本でもこうした作品のオフィシャルのインスパイア・サントラになる迄になった、という事実を歓迎すべき。映画からのSE(ガン・ショット、声等)も効果的に取り入れたZeebraならではの押しの強いトラックに乗る“もう一人のMC”の名はアクション。その映画で重要な役ドコロを演じた彼はラッパーとしても“言いたいことを言う”行動を起こしている。違和感はゼロ。併録はアルバム中でも人気の高かった“あの曲”のイノヴェイダーによるリミックス。

WORD SWINGAZ / Nights (ポリスター)

『Synchronicity 2nd Session』への参加やソウル・スクリームとの“ワードスクリーマーズ”を経て、フューチャーショック入りを果たした、ナニワ裏庭の遊言導師ことワードスウィンガーズのニュー・マキシ。今回の制作は覆面トラックメイカーのナルセミスト(「お前はDJセロリだろ!」藤波社長:談)で、主役の2人の現場感がストレートに出たリリカル・ワールドともこれ以上ない相性を見せている。トラック違い、じゃなく完全な別曲3曲で構成し、“ある一夜”を描くという手法も彼らのスキルがあってこそ、のもの。ドーンといったって頂戴。

夜光虫 / Party King (ポリドール)

地元仙台シーンのみならず、最近の活動(コンピ参加等)で、確実にその名を全国区に広げている夜光虫がメジャー、ポリドールより最高のタイミングでデビュー。ツッチー作の深みのある疾走チューン「Party King」での活き活きした2MCの“喋り”には誰もが心を突き動かされるだろう(DJ=コズミック・カズ版も秀逸)。またMCタテがプロデュースした「One Room Dream」でのアジも捨て難く、一気にアルバムが楽しみな存在に。同時期リリースのカッツのソロEP(制作はDJジン)も濃ゆい出来なので両方チェック。
餓鬼レンジャー / 火ノ国Skill(ポジティブ)

列島横断コンピ『Rap-Wardz Don-Pachi』収録の「サタDefナイツ」に続く、餓鬼レンジャー名義としては久々のEPが到着。「クチコミ5000」ではアジアっぽいバウンス・ビート(と言っても逆に日本じゃ誰もやってなかった?)に乗せて、クチコミというメディアでアガってきた彼ららしいリリックを豊富なボキャブラリーとライミングで放出。同じくグリーンピース作のオケの「火の国Skill」でもポチョムキンとヨシは粘りのある言葉のセイシをトバしまくる。もう一つある「モッコスFunk」版もグッとくる仕上り。とりあえず聴こう!

S.B.S / RM2 : Funky Pitch Man(RDレコーズ)

大阪ドクトクのファンク感/観を見せつける3人組=S.B.Sのニュー・シット。と言っても今回は、2MC=U-ZIとBoo (K.O.D.P.#17) が各々“事実上”のソロをドロップする形をとっており、「RM2」ではU-ZIがKGK作の「妖怪オケ」でリアル・モンスターについて語り(フックで弾けてるのはナニワの最終兵器ことBaka-De-Guess?)、「Funky Pitch Man」ではBooがストイックなライム遊戯を見せている。かと思ったらDJ $hinもスクラッチ・トラックで独特のファンクを発表。こういうグループ名義の作品もアリ、というのが彼らの面白いトコロ。アルバムは5月リリース(予)。