その独特の声、誰も真似できぬオリジナルなフロウと確かなスキル、スタイルを持つ男、YoYo-C。そのヤバさは現場はもちろん数々のコンピやフィーチャリング作品で証明されてきた。そして遂にDappa-CことYoYo-Cが初のソロ・アルバムを完成させた。プロデュース・チーム、Juke Boxとしてアルバム全曲紹介という形でインタビューを試みた。因みに全曲、新曲である。

まずJuke Boxの説明を。
Yoyo-C(以下Y):今回のアルバムで俺とVangeeでリディムから作ったんだけど、そのリディム・トラックを作る2人をJuke Boxとでも呼んでくれればって感じかな。

レゲエ・ファンだけでなく、他の音楽が好きな奴らにも何か感じるさせるモノがあると思うんだけど。
Y:そうだね。このアルバムを「ヒップ・ホップなの? レゲエなの?」とか一番訊かれたくねーな、そこが。俺らがアルバムの中に詰めた答っていうのは、ジャンルなんか関係無しに良いものは良いっていう事が隠れたメッセージって感じで。それを訊かれると一番悲しいし、「ジャンルが必要なのか?」って俺は言いたくなる。俺らやってるのは音楽だから。レゲエ好きなリスナーのちょっと成長した部分がこれで見られるといいかな。

では、アルバムの曲紹介をお願いしたいんだけど。まず1曲目「Free Mic」。 Y:文字通り。何言うかも決めてなかったし。マイクもライヴで握る様なのでやって。

2曲目、12"シングル先行発売の「Sunshine」。
Y:タイトルに反して「雨が降る、雨が降る〜」ってリリックなんだけど、俺の言葉が雨で、聴いたお客さんが感動して、その気分で太陽が昇ってくるって感じ。

一寸だけ聴くとLife Styleからの「雨が降ろうと...」の続編なのかなって思うけど、違うねコレは。
Y:あれは本当の雨、つまり雨をネガティヴなモノとして見てたんだけど、今回はポジティヴなモノととって、雨が降れば木の実はなるし、魚は喜ぶし。

3曲目、Soul ScreamのHabが参加した「Palette」は?
Y:俺がトラック作ってるんだけど、トラックができた時から、これはHab I Screamって。
Vangee(以下V):アルバム作るに当って最初からHabは決まっていて。
Y:まぁ、フィーチャリングを誰とやるかなと考えたら、Fire Ballは当然として、まずHabが出てきた。リリックも言葉で絵を描くみたいな事を出したかったから。奴は存在的にもキャラ的にもバッチリかなって。

「緑の森」ではYoYoがサビだったけど、今回はHabがフックやってるみたいな。逆パターンだね。では4曲目「Te-Ni-Wa〜記者の日記」。
Y:例えば初めてレゲエの現場に来るような人の日記っつーかメモみたいなモノ。行ってみたら皆、広げた手にはグッド・ヴァイヴスを醸し出していて「Music Is Nice」みてーな。レゲエって現場が凄く良い場所だから、それを凄く出したかったって感じかな。

5曲目、Mighty CrownのSimon参加の「We Are,,,」は?
V:Simonに俺の家に来て貰って、ミックスも俺とYoYoでやってるから手作り的なヴァイブスが入ってる。
Y:だけど、やってるのは世界チャンピオンだぞって。だから俺達は機材が良いだのってのは第二って感じで。第一は根元の部分に目を置いているから。

で、6曲目にFire Ball参加の「Run Come」となる…。
Y:Fire Bとは絶対にやるって決めてたから。俺の来た場所であって、今でも一番の交流のあるBrotherenだからさ。リリックも皆で一行一行ポンポン出てきたから結構早く出来たし、人数多ければああいう楽曲になるっつーかさ。

この歌は一言ドープ、つーか男臭いんだよね。そしてキャッチーの欠片もない!
Y:Fire Bは他の所でキャッチーであってくれればいいんだ。メジャーじゃ出来ない事やって貰ったって感じかな。

イメージ的にはFire Bの1st収録の「フクロウ」に似たタイプかな、匂い的には。
Y:「フクロウ」もさ、俺が考えて自分でセットしたからさ。ていうか、Fire Bは男臭いのが似合うんだよね、結局。スティッコとジュンでさ、重戦車走る!みたいな。それを上手く使うには、マイク・リレーよりか全員で突っ走っちゃうっていうのがオモしれーかなっていう。

7曲目はナイヤビンギ調の「More Reality」。これもサンプリング?
Y:そう。これはラテンの人からサンプリングしてるんだけど。サンプル聴いた瞬間から俺の頭の中には出来てるんだよね。これはもうナイヤビンギだなって。これは俺が普段街を歩いていて音楽シーンに対する怒りっていうか、反発心っていうのも含まれてて、このリリックが出てきたかな。掘ればもとヤベー奴が一杯いるのにさ、それを眠らしたままにしてるのは日本の音楽ビジネスのせいじゃねーのか?みたいなさ。

オケも例えば他の人だったら怒りを表す時はHip Hopでもダンスホールでもイケイケ、オラオラな感じして来ると思うけど、敢えてだね、コレは。

Y:俺らの愛してる音楽ってのはレゲエであってさ、戻ればナイヤビンギにあるからさ。ニュー・スタイルなんだけどサンプル使ってさ、基本にある所はやっぱりルーツに戻るみたいな。俺らのスタイルは逆だって言ってる訳、街中のブームとは。

次の曲はインストなんだけど、超ヤバいっ、「Jazzence」。
Y:MPCで俺が喋ってるつーか、表現してるっていう。一曲は歌のないヤツを入れたくてさ。

これはYoYoがイギリスに行ってたり、DJシャドウとかカット・ケミストが好きって言ってたから影響されてる何かを感じるね。
Y:うん、それはかなりデケぇと思う。だけどUKでは俺は超レゲエ少年だったけどね。

で、次は「Shadow」。トラックは探偵っぽいね。
Y:コレは僕は一押しです! 俺は俺で生きてるけど、もう1人の俺がいる訳じゃん。皆はステージ上の俺しか見れないけど、普段の俺をシャドウという形で出して、でも普段のシャドウは中々ヤバいですよって事を歌ってる。何故なら俺はアンダーグランドだからさ。どっちかって言ったらシャドウなんだよ。俺らの影をしっかり追ってればバッチリ良い物をゲットできるよ、みたいなさ。

そして、10曲目の「Cool & Drive」。
Y:実はコレ、警察の事を言ってるだけど。一寸した駐禁だの何だので一々拳銃腰に着けてやって来んじゃねーよっていうさ。そんで正義を語るなって。何もそんな目で追う事ねーんじゃねーのっていう。まぁやり過ぎに対してちょっと怒ってるっていう感じかな。

11曲目、12"シングルにも入ってた「Specialist」。
Y:これ、前からダンスでやってたじゃん。リリースされてなくて、謎なんだけど、一部の現場では既に人気があったんだよね。何でも真剣に一つの事をやってる人へのリスペクトかな。それは何でも良くてさ、まぁ人を傷つけたりする事以外の。皆がもう少しそういう事を意識して見てたら全てのモノのレベルが上るんじゃねーのかなと思って作ったんだ。

12曲目、爽やかな「Mornig News」は?
Y:子供に歌った曲なんだ。自分達の住んでる星は素晴らしい所だし。テレビ・ゲームの中の世界だけじゃなくてさ。自分でやりてーと思ってる事があればソレに行っちゃってもいんじゃないのみたいな。親からしてみれば無責任かもしれないけど。

そしてMoominをフィーチャーした「Golden Love」。
Y:Moominには女の子のラヴ・ソングでも歌って貰おうかなって思ったんだけど、二人でラヴ・ソング歌うのも男臭いしって思って。で、ラヴって方向を女から人類へ向けて。前回のコンビネーションが宇宙ネタで、それより小さくなるのもヤダし。

じゃあ、宇宙から一歩地球に近付いたって感じだね。宇宙規模で考えたら繋がってるという。
Y:そうそう、前回のがあってコレかな。結局、宇宙規模で考えたら僕とMoominは宇宙人だって事で。全人類に聴いて欲しいね。

で、この後の曲なんだけど…。
Y:いや、それはお楽しみって感じで。

最後に。
Y:取材で「何でFire Bを抜けたんですか?」って訊く奴がいるんだけど、そんなモンお前、これに答を詰めてあるから聴いて分かるだろ?みたいな。だから皆にも何故Fire Bを抜けたか、これを聴けば分ってくれると思う。

 という感じでインタビューを終了したのだが、YoYo-Cの聴いてきた音楽のレンジの広さ、彼なりの消化、独特な解釈の仕方、そしてそのコンシャス・リリックを裏付ける彼の考え等がこのインタビューを通じて少しでも伝わっただろうか。実際、本作はジャンルに関係なく、ここ最近のリリース物の中では断然お勧めなんで、この原稿と併せて聴いて貰えれば、YoYo-Cのメッセージが更に伝わり易くなるはずだ。そして一日も早くこの新曲達を現場でも聴きたいぜ、YoYo-C!!



""The Specialist"
[Alpha / YJB4013]