『横浜レゲエ祭』――。マイティ・クラウンにより95年にスタートして以来、クラウンの勢いと共に年々拡大してきたこのレゲエ・イヴェントが、9回目を迎えた今年、クラウン悲願の初の野外公演、1万人のファンを集める日本最大のレゲエ・イヴェントとして開催された。そこで見たものとは?!

 一昨年の『横浜レゲエ祭』、マイティ・クラウンはぎゅー詰めのベイ・ホールの客席に向かって約束した、「来年は野外だ!」。全てはこの一言から始まり、やがてそれは「日本人アーティストだけで1万人の野外イヴェント」という、150人の観客からスタートしたインディペンデントなダンスということを考えれば、とてつもなくデカい目標を掲げることとなる。コトは動き出した、しかし、昨年は実現に間に合わず、クラウンはそれを客に詫びつつも、全く不確かな状況の中にも関わらず、また叫ぶ、「来年こそは野外だ!」と。「あー、言っちゃった」と常に有言実行のクラウンの性格を知る者として、その発言がどれだけ彼等を追い詰めることになるかと危惧したが、余計な心配は取るに足らず、彼等は会場探しから資金調達、様々な団体との協議等、実現に向けて山積する様々な問題を一つ一つ自らで乗り越えて、今年見事に実現とこぎ着けてみせた。とは言え、不安があったのも事実。実際、サイモンは「思ってたより大変。やったことない規模だからよく分かんないだよね。1万人ってのもどうなんだろう? 来るかな? でも約束した以上、もう絶対やるしかない、俺等はいつもそうしてきたから」とこぼしたことがあった。しかし、それを打ち消したのは、その想いに応え、発売と同時にチケットを完売させた多くのファン達。その迅速且つ大きなリアクションは確かな力となってクラウンを、『横浜レゲエ祭』をガッチリとサポートすることになったのだった。

 8月24日、神奈川県横浜市にある八景島シーパラダイス。結論から先に言えば、「素晴らしかった」に尽きる。雨男集団であるクラウンとしては珍しいほどの快晴と灼熱の太陽に恵まれた抜群の環境において、与えられた短い持ち時間を最大限に生かすべく、集中力の高いステージを展開した各アーティスト達の激しいコンペティションは見応え十分。ドライ&ヘヴィーが加わったものの、やや新鮮味には欠けたラインナップはシーン全体の課題として、その多くが新曲を中心に、昨年からの確かな進化をしっかりと見せてくれたことは大きな収穫。個人的なベスト・アクトはヨーヨー・C。

 しかし、この日の主役はステージの下にも居た。炎天下の中、長時間にわたって最後まで休むこと無く熱い声援を送り、アーティスト達と真剣に向き合い続けた観客だ。その猛烈なエナジーとタフネスにも圧倒されたが、そのマナー、残されたゴミの少なさ、客同士で喫煙を注意し合う様子からは、いかに多くの客の中に「自らもがこの祭を支え、守っている」という高い参加意識が宿っているかがしっかりと感じ取れた。各々の立場で、やるべきことをやり、支え合い、分かち合う。そこにはこれまでクラウン、そして『横浜レゲエ祭』が単に客にレゲエの楽しさだけではなく、そこにあるスピリットまでもを地道にエデュケイトしてきた、その積み重ねが見て取れたのである。ブームとか関係無し。そんな空気の中で聴かされた、トリを務めたファイヤー・ボールの「ジャングル・ルーツ」の生々しすぎる歌詞、そして最後のクラウンの「お前等と俺等、みんなで『レゲエ祭』なんだ!」という言葉には思わず胸が熱くなった。誰もが必要で、誰もが主役、参加する者全ての力で成立する、そんなこの「レゲエな祭」に素直に感動させられた。これからも、この祭がこのままに続くことを切に願う。いやー、でもホントに良かった。感謝。