2002年12月から2003年11月末迄にリリースされたレゲエ、ヒップホップの作品の中から音楽史に残すべきベスト・オブ・ベストを発表。レゲエ作品は編集部と本誌でもお馴染みの執筆者による座談会だけでなく、読者投票の結果も加味し、カテゴリー別に厳選。激動のこの一年、後世に伝えるべき名盤は一体何だったのか。


INTENATIONAL REGGAE ALBUMS
1. Good 2 Go / Elephant Man
(Warner / Atlantic)

2. No Holding Back / Wayne Wonder
(Warner / VP)

3. Rise To The Occasion / Sizzla
(Don Corleon / Greensleeves)
4. Serve Jah / Luciano
(Black Scopio / VP)

5. Smile / Jr. Kelly
(VP)



6. Up 2 Di Time / Vybz Kartel
(Don Corleon / Greensleeves)
7. Marshall Low / Wayne Marshall
(VP)

8. No More Heartaches / Sanchez
(VP)

9. Friends For Life / Buju Banton
(Victor)

10. Hail To The King / Turbulence
(Xterminator / VP)



JAPANESE DANCEHALL ALBUMS
1. Specialist / Yoyo C
(Jukebox / Alpha Enterprise)

2. Book Of Life / Fire Ball
(Toshiba EMI)


3. Pieces / Pushim
(Ki/oon Sony)



Miracle Da 8 / Corn Head
(Universal)


Grown Up / Home Grown
(Pony Canyon)



3 The Hardway III / Mighty Jam Rock
(Victor)


Miracle / Minmi
(Victor)



Rise Again / Moomin
(Island / Universal)



湘南乃風 / 湘南乃風 (Toy's Factory)



Dancehall Premier / V.A.
(Victor)




JAPANESE SKA, ROCK STEADY, ROOTS & DUB ALBUMS
Voice Of Love / Cultivator
(Flying High)

A Scilent Prayer / こだま和文
(Victor)

Musical Brain Food / Little Tempo
(Victor)
Meeting / The Miceteeth
(P-Vine)

Step Forward / Mighty Massa
(Alpha Enterprise)
Reggae Magic / Reggae Disco Rockers
(Flower)


REGGAE RE-ISSUE ALBUMS
The Magical Light Of Saba / Cedric Im Brooks & The Light Of Saba (Honest Jons)
Last Train To Skaville / Jackie Mittoo & The Soul Brothers (Soul Jazz)
Their Greatest Hits / The Maytones
(Heartbeat)

Impact! / V.A.
(Universal Sound)



Red Bumb Ball / V.A.
(Pressure Sounds)

Rock A Shacka Vol.2 - Voice Of People / V.A.
(Island / Universal)


INTERNATIONAL REGGAE SINGLES

1. Elephant Man / Pon De River, Pon De Bank / "Pon De River" riddim (Q45)

2. Sizzla / Just One Of Those Days / "Queen Majesty" riddim (Digital-B)

3. Beenie Man / Raw Like A Boat / "Bad Company" riddim (King Of Kings)

4. Beenie Man & Ms. Thing / Dude / "Fiesta" riddim (Mad House)

5. Elephant Man / Signal The Plan / "Signal The Plan" riddim (Q45)

6. Wayne Marshall & Vibez Cartel / Why You Doing It / "Krazy" riddim (Don Corleon)

7. Predetorz & Kiprich / Head Nuh Good / "Gullop" riddim (Builder)

8. Sizzla / Thank You Mama / "Thank You Mama" riddim (Digital-B)

9. Baby Cham / Bad Mind / "Mi Nuh Know" riddim (Mad House)

10. T.O.K. / Unknown Language / "Coolie Dance" riddim (High Society)

10. Elephant Man / Bun Dun Dat / "Good To Go" riddim (Don Corleon)


 【International Reggae Albums】
Killa:Sean PaulDutty Rock』は入るんですか?
小池:今年のHMV年間レゲエ・チャートの1位はやっぱりSean Paulが断トツでしたね。
大場:実は読者投票でも1位だったのですが、昨年のリリースなので残念ながら今回は入りません。
Rankin:Sizzlaなんて去年の『Da Real Thing』に入ってる曲って、今でもガンガン現場で掛かってるじゃん。今年も入れなきゃ。SizzlaSean Paulが1位じゃないの?
大場:いや、
Sizzlaも去年の選考会に間に合ったので駄目です。
石川:SizzlaだったらDon Corleonの『Rise To The Occasion』、あとSanchezNo More Heartaches』がいいんじゃない? あとWard 21U Know How We Roll』も良かったじゃん。でもこれ、去年以前の曲が多かったかなあ。
小池:Morgan HeritageThree In One』は良く聴きましたね。
大場:話題性としては
Wayne MarshallMarshall Law』もありましたけど。
Killa:アルバムならLucianoServe Jah』が良かったね。Black Scorpioの奴ね。あの安いけど太い音と安いジャケがいいじゃん(笑)。あと「No Letting Go」 のWayne WonderNo Holding Back』を忘れちゃいけないでしょ。
石川:話題性や売れたのを良しとするの? それとも話題にはならなかったけど内容が良い物を選出した方がいいのかなあ?
大場:その両方を加味して頂ければ。

Killa:そう言う意味ではTurbulanceって話題性は少ないけど、内容がいいよね。
八幡:Turbulanceって欧州で人気があるんだよね。あと内容の良さと言えばJr. KellySmile』もそんな感じだよね。
石川:Vybz KartelUp 2 Di Time』もギリギリ入るね。今年っぽいと言えば一番今年っぽいかもね。今年っぽいと言って忘れちゃいけないのはElephant ManGood 2 Go』でしょ?
大場:2人の作品は11月末に出たんだけど、この2人ってやっぱり今年のシーンを牽引しましたもんね。
Killa:いやあ、もうElephant Manでしょ!
八幡:まあ、Sean PaulWayne Wonderの去年からの引き続いた人気と、今年のElephant Manのヒップホップを巻き込んだ人気が日本のマーケットを広げた意味はデカいよね。あと、やっぱりSizzlaの奮闘だね。
Rankin:ビルボードでさあ、Sean Paulが1位、Wayne Wonderが3位だった時があったもんね。俺らからしたらショエー!って感じだもんね。
八幡:だって今年のHMV全店のオムニバス・チャート第一位が『Reggae Gold』なんだってさ。TVや新聞でガンガン広告出してるのを抜いてだよ。それって今年のダンスホール・シーンの広がりをリアルに感じる象徴的な出来事だよね。

【Japanese Dancehall Reggae Albums】
石川:完成度って意味では、Yoyo-CSpecialist』か素晴らしかったんじゃないですか? 一発目であれだからね。Boy KenNo Satisfaction』も良かったけど、ミニ・アルバムって言うか、シングル扱いだからなあ…。
Rankin:NanjamanWorld Leader』は?
八幡:これはミニ・アルバムという感じだからね。でもあの歌詞の曲を今年出した意義は大きいよね。一番良く聴いたのはYoyo-CFire BallBook Of Life』かなあ。今年のFire Ballの地道な活動って凄かったしね。あと湘南乃風(『湘南乃風』)の露出が目に付いたね。
大場:湘南乃風もそうだけど、それ以上にMinmiMiracle』って全てがダンスホールじゃないけど、あれだけヒットしたお陰で、今迄ダンスホールに触れて来なかった人に対して、自然にあのリズムを馴染ませたって意味でも意義があると思うけど。
Rankin:Pushimの「Forever」(『Pieces』)って、今でも現場でみんな歌うよね。
大場:クォリティも今迄で一番じゃないですか? あとMighty Jam Rock(『3 The Hardway III』)も関西での人気は絶対的ですよね。ステージ上の存在感も今迄以上に増したと思うし。
石川:Home GrownGrown Up』も良かったよね。今年も相変わらずハード・ワーキンだったし。あとHemo & Moofireが作った『Escape』もいいじゃん。でも海外のアーティストが多いからここだとどうなんだろ? オムニバスだったらHase-Tの『Dancehall Premier』とか、BPBP2011から出た『Dancehall Gangsta』とか、あとRyo the Skywalkerの『How To Hunt In The Bush』もそうか。オムニバスは甲乙つけがたいなあ。
小池:今年も色々出たけど、シーンとしてはやっぱり1万人も集めた『横浜レゲエ祭』の大成功ってのが大きかったんじゃないですか?
八幡:それは言えてるね。今年の日本のダンスホール・シーンの盛り上がりを象徴してるって感じのイベントだったし。
大場:読者投票ではFire Ballが1位でしたね。地道な活動だけじゃなくて、やっぱり『横浜レゲエ祭』の影響もあったのかもしれない。
八幡:『横浜レゲエ祭』ってDVD部門で1位取ったしね。

【Japanese Ska, Rock Steady, Roots & Dub Albums】
小池:CultivatorVoice Of Love』を一番聴きましたね。更に本物になったかなって。
石川:Mighty MassaStep Forard』はどう聴きました?
小池:これはぜひブリブリで聴いて欲しい作品ですよね。
Killa:Reggae Disco RockersReggae Magic』って正統にロック・ステディのカヴァーとかやってるじゃないですか? 奇をてらってる訳じゃないんで、普通に聴いてるだけで凄くいいんですよ。北村さんのキーボードが凄く良かったなあ。
石川:Rocking TimeSummer Jamboree』は、ああいう歌世界って今の若い世代にはちょうど合うんだろうね。同じ三多摩地区だったらLittle Tempoの『Musical Brain Food』って今迄で一番出来がいいんじゃないの?
大場:毎回発展していく感じがありますよね。あと新しいバンドでもBagdad Cafe The Trench Townとか9 Milesとか良いバンドが出てきてますよね。シンガーだとカルカヤマコトも特異な存在感があったので今後も注目してみたいし。あとThe Miceteethもやっとアルバム『Meeting』を出したけど、スカ・ファンだけじゃなくて、J-Popファンも楽しんで聴いたと思いますよ。
石川:今回、ダンスホールとそれ以外を分けたけど、こっちもレゲエ・フィールドで勝負してる人達と、どんどんそこから変化してる人達といるから難しいよね。
大場:確かに。でもテクノ・サイドやドラムン・ベース・サイド、そしてヒップホップ・サイドからレゲエへアプローチするアーティストが増えてきたのって、面白さに気付いた人が増えたって事と、それだけ注目せざるを得ないジャンルになってきたからじゃないですかね?

【Jamaican Re-issue Albums】
Rankin:現象としては今年もTrojanの例のボックスものがダーっと出たのが凄かったなあと。あれを喜ぶのはやっぱ若いファンなんだってのも分った。でも俺らだと妙にダブちゃって嫌だな、ってのもあるよな。
Killa:あれって、物によって薄過ぎだなってのと濃いのとあるからね。『Nayabinghi Box』や『CalypsoBox』とかは良かったし。他の再発とかアナログ盤も含めて、やっぱTrojanじゃないですか?
小池:70年代のDJ物が好きな僕としては、TrojanならTappa ZukieMan Ah Warrior』って待望だったし。
石川:Cedric Im Brooks & The Light Of SabaThe Magical Light Of Saba』も良かったなあ。よくこんなの出したね。Honest Jonsの仕事?
Killa:そう。『Light Of Saba』みたいにヴィンテージとして貴重だった作品って言うと?
石川:Lynn Taitt & The Jetsがバックをつけたオムニバスで『Red Bomb Ball』ってあったじゃん。あれは凄いめっけものですね。ちょっと渋過ぎるかなあ。
小池:Jackie Mittooも2枚出てるけど、貴重性から言うと『Last Train To Skavill』ですね。あとThe MaytonesTheir Greatest Hits』もね。
石川:あっ『Impact!』を忘れてましたね。これは外せないでしょ? あと山名昇監修の『Blue Beat Bop Island Reggae Classics』も山名さんの拘りを感じて良かったしね。Soul Jazzだと『Studio One Story The Original』は去年間に合わなかったから今回に入るよね?
Killa:DVDは一日か二日でロケしただけじゃねえかって感じだったけど、King Stitchの動いてる姿を久々に見れたり、笑えたけど何か良かったなあ。
大場:Rock A Shacka”シリーズはどうでしたか? Determinationsを好きになってスカに入った人達だけに聴かせるんじゃ勿体ない仕事だと思いますけど。
Killa:あっ!『Rock A Shacka Vol.2 Voice Of People』。これっ! Prince BusterVoice Of Peopleの音源がどえりゃー入ってて、7インチで買ったら軽く30万円越えますよ!
Rankin:でもマニアは泣いてるだろうなあ(笑)。「俺が持ってる艶のないレコードと全然違うじゃん」って(笑)。

【International Reggae Singles】
石川:10曲じゃあ収まらないよね。
Rankin:Elephant ManPon De River, Pon De Bank」って今年だよな?
石川:今年ですよ。もうこれって感じじゃないですか?
Killa: Wayne Marshall & Vibez CartelWhy You Doing It」。"Krazy" リズムの奴。"Bad Company" リズムだと?
石川: Beenie ManRaw Like A Boat」でしょ。あと今年のリディムだと "Gullop" かな。それだとPredetorz & KiprichHead Nuh Good」でしょ。Sizzlaだと?
Rankin:「Just One Of Those Days」。
石川:Sizzlaの「Thank You Mama」って今年の方がガンガン掛かってるから入れようよ。あと "Fiesta" だと何ですかね?
Killa:ローカル・ヒットと言ったらElephant Manの方だけど、Beenie Man & Ms. ThingDude」でしょ。あと"Coolie Dance" だったらT.O.K.Unknown Language」かな。まだ忘れてるのがありそうだなあ。
石川:Elephant ManSignal The Plan」は入れなきゃマズいでしょ。 Buju Bantanはちょっと地味だったかなあ…。
Killa:しかし、例えElephant Manのヒット曲だろうと「Anaconda」は入れたくないね。日本人としては怒ってるからさあ。
石川:Sean PaulWayne Wonderも出たのが去年だったからね。それが今年まで引きずったって感じだよね。でもElephant Manばっかだなあ。
Killa:今年って感じでいいじゃないですか。でも毎年今年で消えるだろうって思ってたアーティストが全然消えないんだよねえ。
八幡:それが凄いよね。消えると思ったら年が明けたらパワーアップしてるんだもんなあ。特にElephant Manは凄いよね。そういう意味でも。
石川:シンガー物のヒット曲がないですね。そこのところはSizzlaが持っていった、って感じなのかな? でも、このコーナーでたった10曲だけ選ぶってなると、やっぱ大ヒット曲ばっかりだね。

【Japanese Dancehall Reggae Singles】
石川:日本人物もいっぱい出てるよね。オムニバス・アルバムから全曲カットとか、そういうタイプのが多かったってのもあるだろうけど。でも、去年と比べても、量も増えてるし、日本人物を求めてくるお客さんも多いし。
Killa:日本人ダンスホール・マニアってのが増えたんじゃないんですか? 日本人物を中心にレゲエを聴いてますって言う手堅い2万人ってのがいるんじゃないのかなあ? だってイベントとかの規模だって、他のジャンルと比べてもデカいしね。
小池:全体的にCDとかレコードの売上げが下がっている状況で、レゲエのコーナーは去年よりも延びてるんですよね。
石川:Minmi & PushimIndependentWoman」って話題になったよね。
Killa:Pushimって言えば「Forever」とかHome GrownOasis」とか去年のヒット曲って今年も盛り上がるんだよね。
八幡:ジャマイカと一緒でそういう流れはあったかもね。イベントで盛り上がる曲もそんな感じだったし。でも今年出た曲が同じ様に来年までロング・ヒットするかもしれないし。
Killa:東京ではRankinさんの「New Day-O」やMicky RichWine Yeah」やKen-UDoko」とか、東京は東京って感じで、大阪では多分そういうのは殆ど掛からなくて、Mighty Jam RockRock Cityの曲がヘヴィー・ローテーションだろうし、そういう風にローカルヒットってのが出だしたんじゃない。
八幡:確かに、いま全国各地にサウンドやレーベルがあるから、その地元地元のヒットってのはあるだろうね。

【2003年を振り返って】
石川:ほんと面白かったですよ。やっぱりレゲエは去年よりも人気があっていいんじゃないですか。お店に立ってると実感しますよ。ジャマイカの方は勝手にやってくれるとして、日本人でもっと個性のある新しい若手が出てきたら、もっと広がりが出て盛り上がるでしょうね。まあこのまま行ったら大丈夫だと思うけど、そういう意味でも来年が勝負だと思いますね。
小池:シビアに言えば、お店でも現場でも海外のレゲエと日本のレゲエのお客さんって違うんですよね。これがもう少しリンクしてくればシーンとしても更に良くなるし、いい物を聞き分ける耳も持つと思うんですけど。
八幡:不況の中でレゲエが盛り上がってて良かったよね。その起爆剤としてSean Paulがビルボードで1位を取ったり、Wayne Wonderが奮闘したりと、そういうのがあったけど、それが昔のレゲエ・バブルの時と違うのは、どっちもジャマイカのシーンに向けられて作られた曲が、そのままの形で広がって、そこから色んな事に繋がったってのは幸福な事だったんじゃないかな。そういうエネルギーをレゲエが持ってるっていうのを世界に知らしめたのは良かったよね。今迄レゲエを聴かなかった人が生活の中でレゲエを聴くようになったり、そこから何かをつかんでくれたりする切っ掛けになった年だったと思いますよ。
Killa:去年のヒット曲の流れがそのまま今年に引き続いてたと思いますね。だから去年の曲が今年の決定打だったから、来年も決定打が出ないと厳しいかなってのはありますね。あと、ジャマイカの標語で "Out Of Many, One People" ってのがあるじゃないですか。それを美しいと思っていた人間としては、パラパラみたいなニュー・ダンス・ブームって言うのはちょっとショックでしたね。ジャマイカの世代も代わったって事なのかもしれないけど。ただ国内に目を向ければ、その影響からかダンサーのいない街が殆ど無くなったのは凄いですよね。女の子も参加出来る要素が増えた訳だし。レゲエって誰でも参加出来て個性を伸ばせるジャンルだと思うんですよ。そう言う意味では面白い方向へ向かってますよね。地方のイベントに行っても楽屋に女の子がいるのは凄くいいですし(笑)。それにどのイベントでもお客さんがいっぱいで楽しかったですよ。
Rankin:ギャルと遊べるいいダンスホールになってきましたね(笑)。でも、今よりもっと踊れるいい空間が作れたら良いと思うよね。勿論、それがちゃんと転がっていけてね。日本の方は、来年、でっかいイベントで若手のブリブリした奴が出るといいですね。

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