ここ数年で日本でも知られるようになったソカだが、本場トリニダード・トバゴのトップ・アーティストがこのたび日本デビュー。甘くメロウな「Soul On Fire」がジワジワと噂になりつつあるKMCの登場だ。年末にはビーニ・マンのツアーにも同行した彼を直撃した。

 71年にトリニダード・トバゴのリオ・クラーロで生まれたKMCことケン・マーロン・チャールズは、シンガー/プロデューサーとしてここ数年のトリニダード・ソカ・シーンを支えてきた人物。この文章がみなさんの目に触れる頃、トリニダードでは年に一度のカーニヴァルが始まっているか、もしくは始まろうとしているはずだが、多くのヒット曲を放ってきたKMCはカーニヴァルには欠かせないソカ界のビッグ・スターのひとりである。このたび日本盤としても登場した『Soul On Fire』は、そんな彼の初アルバムだ(2000年にはプロデュースワーク集的な性格の強いコンピ『2000 Pieces Of KMC』がVPからリリースされている)。まずは、これまでの経歴をご本人に簡単に説明してもらおう。

 「音楽を始めたのは7歳の時。オーウェン・ジュリアン(Owen Julien)という人が自宅の地下室に楽器を持っていて、彼の影響で始めたんだ。12歳の頃にはラップのリリックを書いてたんだけど、ダンスホールがトリニダードを席巻し始めてからは、ブリガディア・ジェリー、パパ・サン、シャバ・ランクスを聴いていたよ。最初のヒット曲は“Bashment To Carnival”。98年のカーニヴァルのために97年の12月にリリースしたんだ」。

 同じ頃、KMCはジャマイカにあるジョー・ギブスのスタジオで仕事をしたこともあるという。トリニダードのこの世代のソカ・アーティストの多くがそうであるように、彼もまたダンスホールのエッセンスを吸収しながら、理想とするソカ・ミュージックを作り続けてきたわけだ。NYのシークエンス・レコーズから発表された『Soul On Fire』には、ソカ・ヴァイブ満点の突撃チューンはもちろん、彼のそんなスタンスが表れた楽曲も数多く収録されている。ウェイン・マーシャルの参加はそれを端的に示すものだが、KMC自身の歌い口にも粘っこいDJスタイルがたびたび登場する。

 「ダンスホールは大好きだよ。なにしろソカの前からダンスホールをやっていたからね。僕はソカとトリニダードという国自体を広める大使だと思っているから、そのためならばダンスホールだろうとヒップホップだろうと、どんな音楽とでもリンクするよ。いろんな音楽が好きだしね」

 現在タイトル曲(日本盤にはビーニ・マン、ファットマン・スクープ参加のリミックスも収録)がNYのHot97ほかアメリカ各地のラジオ局でかかり始めているようだが、そんな状況に対しては「興味深く見守ってるよ。どういう結果になるか楽しみだ」とクールなKMC。この曲で聴ける甘い歌い口も彼が得意とするところで、ライトな疾走感を持った「Love」「Put It Up」といった哀愁系ナンバーもいい仕上がりだ。シークエンスとは4枚のアルバム契約を結んだそうだが、これらポップ・ソングは確かに幅広いマーケットにアピールする可能性を秘めている。今後の目標を尋ねると「ソカがグラミー賞を受賞できるように、これまでの10倍以上の努力をしてるよ。僕の音楽が世界中に広まるといいね」。ケヴィン・リトル、ルピーがアトランティックから続いてインターナショナル・デビューし、エドウィン・イヤーウッドもVPから『Next To You』をリリースするなど、ここ最近カリブの外に向けた動きが活発になってきたソカ・シーン。ソカの本場=トリニダードから世界を狙うKMCは(ケヴィン・リトルらはトリニダードのアーティストではない)、これからどんな活動を繰り広げてくれるのだろうか? 最後に、「Soul On Fire」を一早く自身のコンピ/ミックスCD『Soca Soca Soca』に収録するなど、KMCとの交流も深いHemo+Moofireについて一言。

 「彼女たちのことは心の底から愛してるよ。2人に神のご加護があるように祈ってる。彼女たちは、カリビアンのためにとてつもなく大きな事をしてくれているよ」



"Soul On Fire"
KMC
[Victor / VICP-63299]

"2000 Pieces Of KMC"
KMC
[VP / VPCD-1579]

"Soca Soca Soca"
V.A.
[Warner / WPCL-10194/5]