全レゲエ・ファン必聴の『On Bond Street』がいまだにロング・セラーを続けているビティ・マクリーンが待望の初来日。代官山UnitではテクニクスDZ-1200を駆使したオリジナル・トラックで(セレクターはペキングスのクリス・ペキングス)、愛知の「Reggae X-Plosion」ではジェリー・ハリス率いるリズム・フォースを従えて魂を震わす素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。Unitでの終演後の僅かな時間、晴れやかな笑顔で取材に応じてくれた。

●『On Bond Street』を初めて聴いた時、正直な話、心が震えました。どのようにしてあの作品は生まれたのですか?
Bitty McLean(以下B):僕の根底にはファウンデーション・リディムへのこだわりがあるんだよ。「It Keeps Rainin'」(1993年のデビュー曲。全世界で100万枚をセールスし、全英ナショナル・チャートでは2位を獲得)の頃からクラシックのリディムに声を乗せてきたからね。だから『On Bond Street』でも基本的にはそのスタイルを変えてないんだよ。つまり『On Bond Street』では「It Keeps Rainin'」と同じコンセプトを更に深く突き詰めようとしたんだ。

●『On Bond Street』のバック・トラックとして使用したトレジャー・アイルの作品には、特別な思い入れがあったんですか?
B:もちろんスタジオ・ワンも聴いてたけど、トレジャー・アイルのサウンドの方が好きなんだ。父親がサウンド・システムをやっててジャマイカン・ミュージックのコレクターだったんだけど、スタジオ・ワンの作品よりもトレジャー・アイルの作品の方が断然多くてね、子供の頃から聴いてきたから親しみもあるんだよ。やっぱりトレジャー・アイルのサウンドってまとまりがあるというか統率がとれたサウンドだと思うんだ。トミー・マクック他、ミュージシャン同士の関係がハマっていてアレンジがとてもタイトだし、各楽器のサウンドのバランスもいいからこそ、あの素晴らしいサウンドが生まれたんだと思うよ。



●イギリスで「It Keeps Rainin'」が大ヒットした頃にはテレビにも出演しなかったと聞いていますし、ライヴもほとんどやってなかったそうですね。しかもエンジニア出身だから、あなたのことをレコーディング・アーティストだと思っていたので、正直、あのエンターテイナーぶりには驚きました。
B:やっぱりレコードとライヴは別ものだからね。曲ってレコーディングをすることによって一度仕事が終わるんだけど、それをステージに持っていくと曲自体が次のレベルに進むような感覚があるんだ。ライヴでは自由にプレイできるからレコード以上のサウンドが生まれることもあるしね。即興もできるし、観客に乗せられると曲自体が予想外のものに化けたりもする。部屋で一人で曲を聴くんじゃなくて、みんながつながれるってことはヴァイブスを共有できるってことだし、観客からはエネルギーを受け取れるんだ。だから自然とエンターテイナーになれるんだよ。

●レコードではやってないDJスタイルも披露してくれて……。
B:(笑)……U-ロイなどへのリスペクトを表現したくてトライしてみたんだよ。U-ロイってトレジャー・アイルが生んだ重要なDJだからね。もちろん彼だけじゃなく、デューク・リードなど当時のレジェンド達へ純粋にリスペクトを示したかったんだ。

●もう次の作品は制作に入ってるんですか?
B:スライ&ロビーと新しいアルバムを作るプランが進行中なんだ(既にスライ&ロビーと共にSilent Riverというレーベルを立ち上げ、連名で7インチ・シングル「The Real Thing」c/w「All That I Have (Is Love)」をリリース済み)。11月にはジャマイカでレコーディングすることになってるよ。ロビー(・シェイクスピア)と一緒にコンセプトの段階からこだわって新しいアイデアのリディムを作るんだ。もちろん『On Bond Street』と同じことを繰り返すのは簡単だと思うよ。でも、同じスタイルをただ繰り返していたらすぐに飽きられてしまうのは明白だよね? 僕は曲作りもパフォーマンスももっと良くなりたいし、次のステップにチャレンジして発展していきたいんだ。そのためには努力するしかないだろ? だから努力を続けていくだけなんだよ。
[協力/Guiding Star Muzik, CB & Ryohei Nakajima]…。



"On Bond Street"
Bitty McLean
[Overheat / OVE-0095]

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